残置物の処理等に関するモデル契約条項
先月(2021年6月)、国土交通省と法務局が「残置物の処理等に関するモデル契約条項」を公表しました。
内容としては、賃貸で高齢入居者が亡くなった際の残置物問題を解決するためのモデル契約条項となります。今回のモデル契約条項が公表された背景としては、高齢者の人口割合が増加していることが挙げられます。高齢者の人口は1985年に10%、2005年に20%を超え、2020年は28.7%と急増しています。
高齢者の人口増加と合わせて高齢単身者の割合も増加傾向にあります。
単身世帯率の推移と65歳以上の単独世帯数の推移(2020年以降は予測)
不動産投資において人口のマーケットは大きく影響します。
少子高齢化に伴い、高齢者の賃貸需要も増加傾向にあります。しかし、「孤独死の際の原状回復」や「死後の残置物の処理」について、費用や解決に時間が掛かるケースも多く、大家側としては、高齢者の入居申込を拒否するケースもまだまだ多いのが現状です。
高齢入居者のリスク
①孤独死による高額な原状回復費用
②居室内で死後発覚が遅れた場合、次回募集時の賃料下落
③相続人がいない場合の残置物の処理
①・②については、今回深くは触れませんが、火災保険の特約や家賃保証会社の利用によってリスクヘッジが可能です。最近では、家賃保証会社の付帯サービスとして高齢者の見守りサービスなどもあります。
③の残置物の取扱いについては、今回のモデル契約条項が賃貸人にとって大きなリスクヘッジとなります。
残置物の取扱いについて
これまでだと・・・
賃貸借契約の中に特約として、「借主の死後、一定期間経過後、所有動産を貸主や管理会社が処分する」などの文言を入れて対応するケースが多かったが、法律上の根拠が弱く、相続人との裁判になった場合、賃貸人が負ける可能性がありました。
今回のモデル契約条項を活用すると・・・
残置物の処理について借主が事前に手続きを任せる対象と処理の方法を決めておき、賃貸借契約とは別に委任契約を結びます。この委任契約によって訴訟問題にならず、死後の残置物処理を迅速に行うことができます。
まとめ
不動産投資にはさまざまなリスクがありますが、投資家の力量でリスクを減らし、収益力を上げられることが不動産投資のおもしろいところだと思っています。空室対策のためのマーケティング、災害や事故時に備えた保険、建物をメンテンナンスするための修繕や法令関係、資金調達のための金融、確定申告の際の税務など、学ぶことでリスクを減らし、リターンを上げることができます。
今回の「残置物の処理等に関するモデル契約条項」によって高齢者の方が今までよりも賃貸住宅を利用しやすい環境になることを願っております。