【不動産投資】意外と知らない媒介契約のルール
「媒介契約」とは、不動産の売買や賃貸などの営業活動を宅建業者に依頼する契約のことです。この「媒介契約」ですが、意外と認識が誤っている方も多いような気がします。それは、売買と賃貸で根本的な違いがあることです。そもそも法律(宅建業法)上定められているのは、売買に対してのみで、賃貸の場合の媒介契約については、法律上の定めはありません。よって今回説明する「媒介契約」については、売買契約を前提として解説していきますが、後半では賃貸における実務上の「媒介契約」についても解説します。
早速ですが、「媒介契約」には、3つの形式があります。
【媒介契約の種類】
・一般媒介契約
・専任媒介契約
・専属専任媒介契約
一般媒介契約
一般媒介契約とは、売主が複数の不動産会社に直接仲介を依頼することができる媒介契約です。依頼された不動産会社はレインズへの登録義務はなく、売却活動の報告についても特段定めはありません。
■メリット
・複数の不動産会社が取り扱うため、幅広く募集情報を発信できる
・レインズの登録義務がないため、売却を公にしたくない取引に向いている
・売主が自分で買い手を見つけることができる
■デメリット
・不動産会社に報告義務がないため、売却状況を把握しづらい
・不動産会社からすると売却活動の優先度が低い
・問合せや内覧などの対応が煩雑になる
専任媒介契約
専任媒介契約とは、売主が1社の不動産会社に仲介を依頼する契約で、売主が直接他の不動産会社に仲介を依頼することは禁じられています。但し、売主自らが買い手を見つけて契約することはできます。依頼された不動産会社は媒介契約締結後、7日以内(不動産会社及びレインズの休業日は除く)にレインズへ登録しなければなりません。また、売却活動の報告を2週間に1回以上行うことが義務付けられています。
■メリット
・不動産会社の報告頻度が高く、売却状況を把握しやすい
・一般媒介に比べ、不動産会社の売却活動の優先度が高い
・売主が自分で買い手を見つけることができる
■デメリット
・依頼する業者の力量が売却活動に直結する
専属専任媒介契約
専属専任媒介契約とは、売主が1社の不動産会社に仲介を依頼する契約で、専任媒介契約との大きな違いは、売主自らが買い手を見つけてきた場合も依頼した不動産会社を通して契約をすることが義務づけられています。依頼された不動産会社は媒介契約締結後、5日以内(不動産会社及びレインズの休業日は除く)にレインズへ登録しなければなりません。また、売却活動の報告を1週間に1回以上行うことが義務付けられています。
■メリット
・不動産会社の報告頻度が最も高く、売却状況を把握しやすい
・一般媒介・専任媒介よりも不動産会社の売却活動の優先度が高い
■デメリット
・依頼する業者の力量が売却活動に直結する
・売主が自分で買い手を見つけてきたとしても、依頼した不動産会社を介して契約しなければいけない
以上をまとめた表がこちらになります。
ここで注意しておきたいのでが、「元付け業者」と「客付け業者」の違いについてです。
「元付け業者」とは、売主から直接依頼を受けている仲介業者のことです。つまり、今回ご説明した媒介契約を取り交わした業者が「元付け業者」にあたります。
「客付け業者」とは、買主側の仲介業者のことです。専任媒介契約や専属専任媒介契約だと1社の業者でしか買い手を探せないと思っている方もいるかもしれませんが、元付け業者が複数の客付け業者へ買主側の仲介を依頼をすることは問題ありません。但し、元付け業者からすると買い手側の仲介手数料が取れなくなってしまうので、1社で独占するために、他の仲介業者へ客付け依頼をしない業者もいますので、事前に確認しておきましょう。
賃貸の媒介契約について
賃貸の場合も同様で一般媒介の場合は、貸主が複数の不動産会社に直接仲介を依頼し、専任媒介の場合は、1社の不動産会社に仲介を依頼する契約です。但し、冒頭でご説明した通り賃貸の媒介契約は売買と異なり、法律(宅建業法)上定められていませんので、違反したからといって宅建業法上の法律違反とはなりません。但し、特定の不動産会社と「専任媒介契約」に関して取り交わしている場合、契約に違反することにはなりますので、その点にはご注意ください。尚、賃貸の場合は、レインズへの登録義務や賃貸活動の報告義務はありません。
まとめ
媒介契約には「一般媒介」「専任媒介」「専属専任媒介」の3つの形式がありますので、それぞれの特徴を押さえておきましょう。実務上は賃貸の場合でも「一般媒介」や「専任媒介」はありますが、宅建業法上は売買契約においてのみ定めがあります。また、「元付け業者」と「客付け業者」の違いを理解し、不動産会社の強みに合わせて依頼する業者を選定することが大切です。