不動産価格の査定方法
不動産がいくらで売れるのかを知りたいときは、不動産会社へ査定依頼をするのが一般的です。今回は不動産会社がどのように不動産の査定を行っているかについて解説していきます。
【不動産査定の3つの方法】
①取引事例比較法
②原価法
③収益還元法
不動産の査定には、主に3つの方法があります。
①取引事例比較法
取引事例比較法は、類似物件の成約事例を収集し、土地の形状、道路幅、方角、生活環境などの個別的要因を比較考慮しながら価格を査定する方法です。
②原価法
原価法は、同じ不動産をもう一度建築や造成したらいくら必要なのかという観点で査定する方法で、主に土地や戸建の査定に用いられます。土地と建物それぞれで算出しますが、建物については経過年数に応じて価値の減価分を考慮します。因みに原価法による査定価格を「積算価格」と呼びます。
式に表すと以下の通りです。
③収益還元法
収益還元法は、賃貸用不動産などが将来生み出すと期待される収益から価格を割り出す方法です。収益還元法には「直接還元法」と「DCF法」の2種類があります。
・直接還元法
直接還元法とは、1年間の純収益を還元利回り(キャップレート)で割り戻して算出する方法です。
ex)年間家賃収入:400万円、経費:20%、還元利回り:8%とした場合
純収益:400万円 -(400万円 × 20%)= 320万円
不動産価格:320万円 ÷ 8% = 4,000万円
・DCF法
DCF法とは、ディスカウントキャッシュフロー法の略であり、将来的に得られる利益と売却時の予想価格を現在の価格に割り引き、その合計額を不動産価格とする方法です。
「現在の価格に割り引く」というのが、イメージしにくいかもしれませんが、同じ100万円でも現在の100万円と5年後の100万円では、現在の100万円の方が価値が高いとされています。理由としては、現在の100万円は投資などで運用することで、さらに増える可能性がありますし、インフレによって、現金の価値が下がる可能性があるからです。
ex)年間の収益:100万円、5年後の売却額:1,000万円、割引率:3%とした場合
1年目の収益は現在の価値に割り引くと
100万円 ÷ (1+3%)≒ 97万円
2年目の収益は現在の価値に割り引くと
100万円 ÷ (1+3% )2 ≒ 94万円
3年目の収益は現在の価値に割り引くと
100万円 ÷ (1+3% )3 ≒ 91万円
4年目の収益は現在の価値に割り引くと
100万円 ÷ (1+3% )4 ≒ 89万円
5年目の収益は現在の価値に割り引くと
100万円 ÷ (1+3% )5 ≒ 86万円
となります。
同様に5年後の売却額の1,000万円を現在価値に割り引くと
1,000万円 ÷(1+3%)5 ≒ 860万円
となります。
よって、この不動産価格は、
97万円 + 94万円 + 91万円 + 89万円 + 86万円 + 860万円 ≒ 1,320万円
となります。割引率を考えずに計算すると1,500万円なので、10%以上の差が生じることになります。実際に計算する際には固定資産税の上昇率や修繕費の発生するタイミングなども考慮に入れる必要があります。
まとめ
対象物件や目的によってこれら3つの査定方法を使い分ける必要があります。
例えば、土地や戸建などは、「取引事例比較法」や「原価法」で算出し、収益物件については、「収益還元法」で算出するのが一般的です。不動産は全く同じものがなく、不動産会社によっても価格に差が出る場合があります。不動産会社の査定方法が必ずしも正しいとは限りませんので、査定額が妥当な金額かを判断するためにもご自身で査定方法や相場を把握しておくことが大切です。
【不動産投資】絶対に知っておきたい7つの指標
前回はキャッシュフローツリーについて解説しましたが、今回はその応用編です。不動産投資は一般的にミドルリスク・ミドルリターンと言われていますが、今回解説する7つの指標をマスターすれば、ローリスク・ミドルリターンに変えることができます。
■Case
物件価格:5,000万円(満室想定年間賃料:500万円)
諸経費:400万円
自己資金:1,000万円
借入:4,000万円(借入期間:20年、金利:2%)
空室率:10%
運営費:20%
①LTV(Loan To Value = 借入金割合)
物件価格に対する借入金の割合。
LTV = 借入金 ÷ 物件価格
②K%(Loan Constant = ローン定数)
ADS(年間返済額)のローン残高に対する割合。
K%はコストですので、低いほど有利な融資が獲得できているということ。K%を下げるためには「融資期間を延ばす」「金利を下げる」のどちらかを行う。
K% = ADS(年間返済額) ÷ LB(ローン残高)
③FCR(Free and Clear Return = 総収益率)
NOIを物件価格や諸費用など物件を購入するために費やした金額で割った数値。総コストに対して物件がどれだけの収益を生んでいるかを示す指標。つまり「真の利回り」です。
FCR = NOI ÷ 総投資額(物件価格 + 諸費用)
④CCR(Cash on Cash Return = 自己資本配当率)
BTCF(税引前キャッシュフロー)を自己資金で割ることで算出。自己資金に対してどれだけのリターンがあるのかがわかる。
⑤PB(Pay Back = 自己資本回収期間)
投資した自己資金を何年で回収できるか?
PB = 自己資金 ÷ BTCF
⑥DCR(Debt Coverage Ratio = 借入償還余裕率)
投資の安全性を測る指標でNOI(営業純利益)をADS(年間返済額)で割ったもの。ローン返済の何倍の収入があるかを算出し、大きければ大きいほどリスクが低く、小さければ小さいほどリスクが高くなる。DCRは1.3以上が理想的。
⑦BER(Break Even Ratio = 損益分岐入居率)
OPEX(運営費)とADS(年間返済額)の合計額のGPI(総潜在収入)に対する比率で、各年度のOPEXとADSの合計額をカバーするためにには空室率がどれくらいまで許容できるかを判断するための指標。70%以下が理想的(エリアによる)
以上が「絶対に知っておきたい7つの指標」になります。
特に重要なのは「FCR」と「DCR」です。
表面利回りで判断するのではなく、FCRで判断することで、その物件の本当の収益性を知ることができます。また、借入によって物件を購入する際は、DCRで判断することで、投資の安全性を測ることができます。
ここからは、更に上級編となります。
①レバレッジ効果
K%とFCRを比較することによってレバレッジ効果が働いているどうかの判断ができる。K%よりもFCRの数値が大きければ、レバレッジが効いているということ。
CCR > FCR > K%
②イールドギャップ
投資の実質利回りと融資の金利との差です。イールドギャップがプラスであれば、収益がプラスであることを表している。一般的に1.5以上のイールドギャップが確保できると理想的。
YG = FCR - K%
③キャップレート(Capitalization Rate = 総合還元利回り)
キャップレートとは、不動産の収益性を表した利率のことで、不動産価格を算出するときに使う。エリアや築年数などを考慮して導き出される。
CapRate = NOI ÷ CapRate ⇒ 物件価格 = NOI ÷ CapRate
まとめ
不動産投資は事前のシミュレーションによって、成功する投資なのか失敗する投資なのかが予測できます。まずは、不動産投資の基本となるキャッシュフローツリーを算出し、そこから7つの指標を導き出してみましょう。不動産業者に進められるがままに購入するのではなく、投資家自身で判断できるようになることが、不動産投資成功の鍵となります。
【不動産投資】家賃保証会社の選び方
家賃保証会社とは、文字通り家賃を保証してくれる会社です。
賃貸経営におけるリスクの1つに滞納リスクがあります。せっかく入居付けしても家賃が入ってこなければ、賃貸経営は成り立ちません。そこで、滞納リスクをカバーするために家賃保証会社の需要が非常に高くなっています。
今回は家賃保証会社の選び方について解説していきます。
【保証会社選びのポイント】
①弁済方法
②保証範囲
③審査基準
④経営状況
①弁済方法
保証会社の滞納家賃の弁済方法には「代位弁済」と「収納代行」の2種類があります。
「代位弁済」とは、オーナーが家賃の滞納を確認した後に、保証会社へ滞納分を代わりに払ってもらうよう請求する仕組みです。これを「代位弁済請求」といいます。弁済請求には期限がありますので、賃貸オーナーは、毎月の入金管理を行い、弁済請求をし忘れないようにする必要があります。
「収納代行」とは、その名の通り、「家賃の収納(集金)を保証会社が代わりに行う」ことです。つまり、保証会社が直接入居者へ家賃を請求し、入金の有無に関わらず、保証会社からオーナーに家賃が振り込まれる仕組みです。「代位弁済」のような弁済請求の手間もないので、基本的には放置していても問題ありません。
②保証範囲
保証範囲には、主に以下のような内容があります。
【保証範囲】
・月額賃料等
・原状回復費用
・明渡訴訟費用
・残置物撤去費用
・短期解約違約金
・更新料
・その他
保証会社や保証プランによっては、対象外の項目もありますので、ご利用になる保証会社の保証内容を事前に確認しておきましょう。特に、明渡訴訟費用や残置物撤去費用は高額になる可能性がありますので、保証プランに入っているか必ず確認しましょう。また、月額賃料については、保証上限期間についても確認しておきましょう。
③審査基準
保証会社は大きく分けて「独立系」と「信販系」の2種類があります。
独立系と信販系で審査のポイントが異なりますので、それぞれの特徴について解説していきます。
【独立系】
保証会社が独自の審査基準を設けており、一般的には信販系と比較すると審査に通りやすい傾向にあります。
【信販系】
個人信用情報を元に審査を行うため、過去にクレジットカードや携帯代などの滞納歴があると審査が否決になる可能性が高いです。
④経営状況
そもそも論として、保証会社自身が倒産してしまう可能性もゼロではありません。
倒産リスクを防ぐために安心できる保証会社選びのポイントは次の2つです。
【財務状況が安定している】
具体的には、自己資本比率が50%以上あれば、優良企業といわれています。
【社会的に信頼がある】
具体的には、上場企業です。
まとめ
保証会社を選ぶ際は、①弁済方法②保証範囲③審査基準④経営状況を確認し、ご自身の物件や経営方針に合った保証会社を選ぶことが大切です。例えば、保証会社の審査が緩い場合、入居率は上がるかもしれませんが、入居者の質が悪くなったり、保証会社の倒産リスクが高まる可能性もあります。家賃保証会社についてしっかり理解し、賃貸経営の成功に繋げていきましょう。
【不動産投資】キャッシュフローツリーについて解説
みなさんは不動産投資を始めようと思ったときに、何を基準に物件を購入しますか?
今回は、投資物件を購入するための判断基準の肝となる「キャッシュフローツリー」について解説していきます。
キャッシュフローツリーとは?
年間の家賃収入から管理費、ローン返済額などの支出を引き、手元に残るお金を算出するための一連の流れを表したものです。
実際のキャッシュフローツリーがこちらです。
上から順番に解説していきます。
GPI(Gross Potential Income:総潜在収入)
満室・滞納なしを前提とした1年間の家賃収入の総額。
EGI(Effective Gross Income:実効総収入)
GPIから空室率と未回収損を差引き、さらに駐車場や自動販売機などの雑収入を足した実際に入ってくる収入。
EGI=GPI-空室・未回収損+雑収入
OPEX(Operating Expenses:運営費)
収益不動産を運営するためにかかるランニングコスト(経費)。固定資産税や管理料、共用部分の電気代や水道代など
NOI(Net Operating Income:営業純利益)
EGIからOPEX(固定資産税や管理料、共用部分の電気代や水道代などの運営費)を差し引いた金額。
NOI=EGI-OPEX
ADS(Annual Dept Setvice:年間返済額)
年間の返済総額。元利均等返済の固定金利ローンの場合、ADSは毎年一定額となる。
ADS=年間元金返済額+年間利息返済額
BTCF(Before-Tax Cash Flow:税引前キャッシュフロー)
NOIから年間のローン返済額を差し引いた税引前の収入。
BTCF=NOI-ADS
減価償却費
減価償却とは、建物部分(設備含む)を、構造・築年数ごとに一定期間分割して経費計上を認めているもの。
ex)木造:22年、重量鉄骨造:34年、RC造:47年
ATCF(Ater-Tax Cash Flow:税引後キャッシュフロー)
収入を得たことによって発生する税金を差し引いたものが税引き後キャッシュフロー。対象物件に不動産投資したときに発生する税金などを差し引いた実際の収益。
ATCF=BTCF-TAX(税金)
まとめ
不動産投資は手残りのキャッシュフロー、つまりATCF(税引き後キャッシュフロー)をいかに残せるかが重要です。但し、税金まで考慮すると計算が複雑になりますし、法人・個人、その方の所得などでも変わってきますので、物件の判断指標としては、BTCF(税引き前キャッシュフロー)までで十分です。表面利回りだけで判断するのではなく、運営費やローン返済額を考慮し、実際に儲かる物件なのかどうかを事前にシミュレーションすることで不動産投資の失敗を防ぐことができます。
【不動産投資】初心者に戸建投資がおすすめな5つの理由
不動産投資を始めようと思ったときに、「何から買えばいいの?」と迷う方がほとんどだと思います。不動産投資といっても1棟アパート、1棟マンション、戸建、区分マンションなど種類は様々でそれぞれ特徴も異なります。今回は、初心者に戸建投資がおすすめな5つの理由について解説していきます。
【戸建投資がおすすめな5つの理由】
①少額から始められる
②固定費が安い
③客付けがしやすい
④管理の手間がかからない
⑤2棟目以降が買いやすくなる
①少額から始められる
アパートやマンションの場合は高額なので、一般的には金融機関から大きな借入をして購入することになりますので、失敗したときのリスクが大きいです。しかし、中古の戸建は数百万円と現金で買えるものも多く、借入したとしても大きな借金を背負うことにはならないので、失敗したときのリスクも小さくて済みます。
②固定費が安い
わかりやすく区分マンションと比較してみましょう。区分マンションの場合、管理費・修繕積立金・固定資産税などが最低限固定費として掛かりますが、戸建の場合は固定資産税くらいです。借入をした場合はそこから更にローン返済額、不動産会社に管理を任せた場合は、管理料なども掛かってきます。戸建も区分マンションも比較的少額で購入はできますが、戸建は区分マンションに比べ、固定費が安くキャッシュフローが出やすいというメリットがあります。但し、ある程度の修繕費は見込んで購入しましょう。
③客付けがしやすい
戸建賃貸はアパートやマンションに比べて供給数が少なく、希少性があり、客付けがしやすいです。勿論、エリアにもよりますし、地方においては、駐車場も必須になってきます。因みに、客付けがしやすい戸建の条件は以下の通りです。
【客付けがしやすい戸建の条件】
・2LDK~4LDK(ファミリー向け)
・駐車場あり(2台以上だと更に有利)
・ド田舎はNG(賃貸需要が全くないエリアはNG)
④管理の手間がかからない
アパートやマンションの場合は、共用部の清掃やメンテナンスを家主がしなければいけないので、管理の手間が掛かります。よって、多くの家主は管理料を支払って管理会社へ委託しているケースがほとんどです。しかし、戸建の場合は共用部分がなく、基本的には、庭の除草なども入居者が行うので、管理の手間が掛からず、自主管理することも容易です。
⑤2棟目以降が買いやすくなる
戸建と区分マンションで比較すると、戸建の場合は土地付きなので、担保評価が出やすいです。よって、2棟目以降を購入する際に、共同担保に入れることで、金融機関からの借り入れがしやすくなります。融資を使って規模を拡大していきたい方にはお勧めの戦略となります。但し、共同担保に入れてしまうと共同担保を外さないと売却ができなくなってしまいますので、その点には注意が必要です。
【まとめ】
戸建投資は数百万円と比較的少額から始めることができます。かぼちゃの馬車などの不正融資問題をきっかけに、近年、金融機関の融資状況も厳しくなってきていますので、特に今から不動産投資を始めたいという方には、現金でも購入しやすい中古の戸建投資がおすすめです。但し、雨漏り、白アリ、傾きなどがあると修繕費も高額になってきますので、事前に修繕費をシミュレーションして購入しましょう。
【不動産投資】火災保険の選び方
今回は賃貸オーナー向け火災保険の選び方について解説します。不動産投資家の方でも意外と火災保険の内容を理解されていない方も多く、保険会社や代理店任せで不要な特約に入っているケースがあります。まずは、保険商品の内容や特徴を理解し、ご自身の物件に合わせた保険に加入されることをお勧めします。
【火災保険の全体像】
6つの基本項目 + 地震保険 + オプション特約
<プランの選び方>
・「基本項目」は表の5つのプランから選びます。
・「地震保険」は基本項目とセットで付けることができます。
・「オプション特約」は必要なものだけ付けます。
【6つの基本項目】
①火災、落雷、破裂、爆発
②風災、雹災、雪災
③水ぬれ
④盗難
⑤水災
⑥破損、破裂等
【6つの基本項目(解説)】
①火災、落雷、破裂、爆発
火災保険の代表である火災時に保険金が支払われる項目です。また、意外と使えるのが、「落雷」です。具体例としては、雷によってエアコンなどの電気設備が故障した場合などです。
②風災、雹災、雪災
建物の事故件数の割合としては、自然災害に関する事故が最も多く、「風災、雹災、雪災、水災」の割合は68.4%と半分以上を占めています。中でも「風災」は非常に多いです。具体例としては、台風などの強風でガラスが割れてしまった場合や、雨樋の破損などです。毎年台風が来ますし、地域によっては、毎年雪も降りますので、必ず入っておきましょう。
③水ぬれ
具体例としては、給水管の破損などにより、天井や壁紙などが汚れてしまった場合です。ポイントとしては、「突発性のある事故」であることです。「経年劣化した部分」については、保険がおりませんので、ご注意ください。
④盗難
泥棒が家に侵入した際にガラスを割る等、建物に損害が発生してしまった場合などです。
⑤水災
河川の氾濫などにより「水に浸水した場合」の補償です。水害ハザードマップで浸水規模が確認できるので、そちらを参考に検討してみてください。
⑥破損、破裂等
具体例としては、「外壁に車をぶつけられて凹んでしまった」というような場合です。その他、敷地内にフェンスや外灯など付属物があると、使える機会が多いです。また、凍結による水道管破裂もこちらの内容で補償できます。
【地震保険】
地震による火災や損壊、噴火による埋没、津波による流失などに対応した保険です。補償金額は主契約で加入している火災保険の保険金額の30~50%の範囲で設定できます。また、建物の損害については、5,000万円が上限で、家財の損害については、1,000万円が上限となります。
【オプション特約】
①事故時諸費用特約
②特定機械設備水災補償特約
③居住用建物電気的・機械的事故特約
④類焼損害・失火見舞費用特約
⑤日常生活賠償特約
⑥受託物賠償特約
⑦弁護士費用特約
⑧自宅外家財特約
⑨家財明記物件特約
⑩屋外明記物件特約
⑪借家賠償・修理費用特約
⑫家賃収入特約
⑬家主費用特約
⑭賃貸建物所有者賠償特約
⑮マンション居住者包括賠償特約
【オプション特約(解説)】
<重要度>
★★★・・・高い
★★・・・普通
★・・・低い
①事故時諸費用特約(オススメ度:★★★)
損害保険金が支払われる場合に、損害保険金にプラスして20%(もしくは10%)上乗せで支払われる特約です。
※支払限度額:300万円
<コメント>
個人的にはかなりオススメの特約です。例えば、100万円の損害保険金が支払われる場合、20万円が上乗せされ、保険金合計額は120万円となります。
(※事故時諸費用特約:20%の場合)
②特定機械設備水災補償特約(オススメ度:★)
台風・豪雨等による洪水などにより、電気設備やガス設備等の機械設備に損害が発生し、床下浸水等で基本補償における浸水条件を満たさない場合に、1回の事故に付き1敷地内ごとに最大100万円まで補償します。
<コメント>
10年以上、不動産管理の仕事に携わっておりますが、使えるケースはありませんでした。上限額も100万円と低いので、個人的には不要です。
③居住用建物電気的・機械的事故特約(オススメ度:★)
電気設備やガス設備等の機械設備に、電気により発生した焦損・炭化・絶縁破壊等の物的損害を伴う事故や、機械の稼働により発生した亀裂・折損・変形・剥離等の物的損害を伴う事故が発生した場合に、1回の事故につき建物保険金額を限度に補償します。
<コメント>
使えるケースがかなり限定されていて、個人的には不要かと思います。
また、落雷による電気設備の事故であれば、基本プランの「落雷」で対応できます。
④類焼損害・失火見舞費用特約(オススメ度:★)
【類焼損害】
自宅の火災、破裂・爆発事故によって、近隣の建物や収容動産に発生した損害を、1回の事故につき最大1億円まで補償します。
【失火見舞費用】
自宅の火災、破裂・爆発事故によって、近隣の建物や収容動産に損害が発生したために支出した見舞金等の費用を補償します。
<コメント>
個人的には不要です。理由としては、火元の人は「失火責任法」という日本の法律によって守られており、隣の家などに燃え移っても放火などでもない限り、火元の人が責任を問われることはないからです。
⑤日常生活賠償特約(オススメ度:★)
日常生活における偶然の事故などの補償です。
<コメント>
賃貸オーナー向けの保険ではないので、個人的には不要です。もし入りたいという方はいろんな保険でつけることができますので、どれか1つだけこちらの特約をつけておくといいと思います。
⑥受託物賠償特約(オススメ度:★)
日本国内において、他人から預かったものやレンタル品等の受託物を損壊、紛失させたことまたは盗難にあったことにより、法律上の損害賠償責任を負った場合の損害を補償します。
<コメント>
賃貸オーナー向けの保険ではないので、個人的には不要です。
⑦弁護士費用特約(オススメ度:★)
【弁護士費用等】
日本国内における偶然な事故によって、ケガをしたり、自宅や家財が損害を受け、損害賠償請求を弁護士等に委任したときの費用等を、1回の事故につき被保険者1名ごとに最大300万円まで補償します。
【法律相談費用】
日本国内における偶然な事故によって、ケガをしたり、自宅や家財が損害を受けた場合の弁護士等への法律相談費用を、1回の事故につき被保険者1名ごとに最大10万円まで補償します。
<コメント>
顧問弁護士や法律関係の相談ができる不動産会社等のパートナーがいる場合は不要です。
⑧自宅外家財特約(オススメ度:★)
選択されたご契約プランで補償される事故によって、日本国内外で携行中の家財や、 家賃の損失をご契約時に定めた期間を限度に補償します。日本国内の別荘等に収容する家財に発生した損害を補償します。
<コメント>
賃貸オーナー向けの保険ではないので、個人的には不要です。
⑨家財明記物件特約(オススメ度:★)
選択されたご契約プランで補償される事故によって、貴金属等(注)に損害が発生した場合に、特約保険金額(盗難および破損、汚損等は1個または1組ごとに100万円が限度)を限度に補償します。
<コメント>
賃貸オーナー向けの保険ではないので、個人的には不要です。
⑩屋外明記物件特約(オススメ度:★)
選択されたご契約プランで補償される事故によって、屋外明記物件(注)に損害が発生した場合に1回の事故につき特約保険金額を限度に補償します。
<コメント>
賃貸オーナー向けの保険ではないので、個人的には不要です。
⑪借家賠償・修理費用特約(オススメ度:★)
【借家賠償】
偶然な事故により、借用住宅に損害を与えたことによる貸主に対して法律上の損害賠償責任を負った場合の損害を1回の事故につき、特約保険金額を限度に補償します。
【修理費用】
偶然な事故により、借用住宅に損害が発生し、貸主との契約に基づきまたは緊急的に被保険者が自己の費用で修理した場合の修理費用を、1回の事故につき最大300万円まで補償します。
<コメント>
こちらは入居者向けの内容になります。
⑫家賃収入特約(オススメ度:★★)
選択されたご契約プランで補償される事故によって、建物が損害を受けた結果発生数家賃の損失をご契約に定めた期間限度に補償します。
※家賃収入特約の保険金額 = 家賃月額 × 約定復旧期間の月数
<コメント>
「家賃収入特約」を付けることで、次に紹介する「家主費用特約」を付けることができます。高齢者や単身向け住宅については、孤独死リスクが高まりますので、そういった物件に「家主費用特約」とセットでお付けすることをお勧めします。
⑬家主費用特約
賃貸住宅(注)内で死亡事故(自殺、犯罪死または賃貸住宅の物的損害を伴う孤独死)が発生し、死亡事故発見日から90日以内に賃貸住宅が空室となり、30日以上続く空室期間または空室期間の短縮のために家賃を値引きしたことによる値引期間の家賃損失を補償します。また、修復・清掃・脱臭費用等の原状回復のための費用や遺品整理費用等についても100万円を限度に補償します。
(注)保険の対象である建物のうち、居住者が賃借する戸室(専用使用部分を含みます)をいい、共用部分は含みません。
<コメント>
高齢化が進む日本において、高齢者をターゲットとした賃貸物件は自然と増えていきます。室内でお亡くなりになられた場合、遺品整理や原状回復費用が高額になるケースがありますので、孤独死リスクのある物件については、お勧めの特約です。
⑭賃貸建物所有者賠償特約(オススメ度:★★★)
保険の対象となる建物や建物の使用・管理業務が原因で他人に損害を与えた場合に補償する特約です。
<コメント>
賃貸オーナーは必ずと言っていいほど入っておいた方がいい特約です。例えばエレベーターの人身事故や屋根が落下して、入居者の車に被害が及んだ場合など、起こりうる高額な損害を補償できる特約になります。
⑮マンション居住者包括賠償特約(オススメ度:★)
居住用戸室での漏水等の賠償事故または日常生活における賠償事故による損害または日本国内において、電車等の損壊を伴わない運行不能について法律上の損害賠償責任を負った場合の損害を1回の事故につき特約保険金額を限度に補償します。共同住宅の居住者等を無記名で包括的に補償する特約です。
<コメント>
賃貸オーナー向けの保険ではないので、個人的には不要です。
個人賠償保険を入居者全員に付けるようなイメージで、どちらかというとマンションの管理組合向けの内容です。
【まとめ】
火災保険は6つの基本項目+地震保険+オプション特約で構成されています。
まずは、火災保険の内容を理解し、どういった場合に使えるのかを押さえておきましょう。
本来、保険で対応できる内容なのに、知らずに「全額自己負担してしまった」というケースはかなり多いです。まさに「宝の持ち腐れ」です。また、「不安だからなんとなく入っておこう」という思考から不要な特約に入っている方もいらっしゃるのではないでしょうか?
物件に合わせて最適な保険選びをすることで、無駄なコストを払わなくて済みますので、今回の内容を参考に是非ご自身の火災保険を見直してみてはいかがでしょうか?
【不動産投資】9つのリスクと対応策
今回は不動産投資において想定されるリスクとその対応策について解説していきます。
不動産投資に限らず、投資にはリスクがつきものです。但し、不動産投資は株や債券などと違い、投資家の力量によってリスクを軽減することができ、そこが不動産投資のおもしろいところでもあります。
不動産投資9つのリスク
①空室リスク
②滞納リスク
③家賃下落リスク
④不動産価格下落リスク
⑤修繕リスク
⑥金利上昇リスク
⑦火災リスク
⑧災害リスク
⑨孤独死リスク
①空室リスク
空室リスクとは、投資物件に借り手がつかず、空室の状態で家賃が入ってこないリスクです。不動産投資最大のリスクといえます。
【対応策】
・好立地の物件選び
・客付力のある賃貸管理会社選び
・市場のニーズにマッチした物件
そもそも賃貸需要がないエリアで入居付けするのは厳しいです。不動産は買った後に立地は変えられないので、賃貸需要のあるエリア選びが重要になります。また、不動産会社によって、客付け力に差がありますので、客付け力のある不動産会社を選ぶことで空室リスクが軽減できます。
ここでありがちなのが、立地は悪くないのに、入居が決まらないという原因を不動産会社のせいにしている大家さんです。勿論、不動産会社が原因で決まらないことはありますが、市場のニーズに合った物件になっているかどうか、合っていなければ設備や募集条件などを市場のニーズに合わせていく必要があります。
②滞納リスク
物件の入居者が入っていても、滞納により家賃が入ってこなければ、賃貸経営は成り立ちません。
【対応策】
・家賃保証会社の利用
・滞納立替が可能な賃貸管理会社選び
家賃保証会社によって、審査基準や弁済範囲が異なりますので、事前に確認しておきましょう。家賃保証会社選びのポイントとしては以下の通りです。
【家賃保証会社選びのポイント】
・家賃保証内容・・・家賃滞納、更新、原状回復の際に保証される保証上限額など
・経営状況・・・資本金や債務超過になっていないか等保証会社の倒産リスクの確認
・弁済方法・・・「代位弁済」と「収納代行」の2種類があります。
「代位弁済」とは、大家が家賃の滞納を確認した後に保証会社に対して請求を行う方法
「収納代行」とは、家賃回収自体を保証会社が行う方法
また、不動産会社に管理を委託する際は、滞納保証型かどうか、また保証期間に上限があるかどうかを確認しておきましょう。
③家賃下落リスク
日本の一部のエリアを除き家賃は下落傾向にあります。主な理由としては、建物の老朽化と需要と供給のバランスです。日本の人口減少、物件数の増加により供給過多となっており、結果的に賃料は下落傾向にあります。
④不動産価格下落リスク
日本において建物価値は新築時がピークで年々建物価値が減少していきます。よって土地値が上がらない限りは、「積算価格」は購入時よりも下落していきます。また、③と重複しますが、家賃下落により、「収益価格」も下落します。
「積算価格」・・・土地と建物のそれぞれの価値を合算した価格
「収益価格」・・・対象物件から得られる家賃を基に還元利回りで割り戻した価格
⑤修繕リスク
築年数や構造、物件規模によって、修繕費に大きく差が出ますので、購入前のシミュレーションで修繕費もある程度考慮しておきましょう。
⑥金利上昇リスク
変動金利で不動産投資用ローンの融資を受けた際に、金利が上昇すると毎月の返済額も上昇します。
⑦火災リスク、⑧災害リスク
火災や地震などで建物が滅失すると家賃収入を得られなくなるだけでなく、売却価格も下がり、想定していた出口戦略もとれなくなります。また、台風や水災などの自然災害によって想定外の出費が発生する可能性があります。
【対応策】
・火災保険の加入
火災、落雷、風災、水災、水濡れなどによる建物の損害について、火災保険でカバーできます。また、地震保険は火災保険とセットで付けることができます。
⑨孤独死リスク
単身の高齢者などについては、室内でお亡くなりになる場合も想定されます。
そういった場合には、室内の遺品整理や原状回復費用などが大家さんで負担しなければいけないケースも出てきます。また、発見までに時間が掛かってしまうと、心理的瑕疵により賃料が下落してしまう可能性もあります。
【対応策】
・高齢者見守りサービスへの加入
・火災保険の特約
「高齢者見守りサービス」とは、定期的に入居者の方への連絡、安否確認などを実施するサービスです。入居者の方に加入してもらうことで、万が一、室内でお亡くなりになった場合に早期に発見することができ、損害を最小限に抑えることができます。
室内での孤独死に伴う遺品整理や原状回復費用については、「家主費用特約(火災保険の特約)」でカバーできます。また、孤独死などの事故により建物が損害を受け、家賃が下落した場合については、「家賃収入特約(火災保険の特約)」でカバーできます。
(※保険会社によって商品名が異なる場合がございます)
【まとめ】
今回は不動産投資の9つのリスクと対応策について解説させていただきました。
不動産投資はリスクが多くて恐いと思った方もいるかもしれませんが、事前に対策をとることでこれらのリスクを軽減できます。物件によって、想定されるリスクも異なりますので、物件や投資家のリスク許容度に合わせて、必要な対策をしていきましょう。